訪れるは度目の来訪者
今宵も貴方に最上の歓迎を・・・
今日のお話〜鬼の嫁〜
降りしきる雪を見ながら、僕はコタツの上に残ったミカンの皮をゴミ箱に向けて放り投げる・・・失敗!後で箱に入れないと
そう思って放置したままのゴミがずいぶんとゴミ箱のまわりにあるけれど・・・まぁ、気にしたらダメだよね
だってコタツだし。それにしても・・・
「暇だよぉ〜。どうしてスキーも何もできないのよぉ〜」
「そう言っても、こう吹雪いてたら・・・ねぇ」
「ぶーぶー、スキーが楽しめるっていうからこっちに帰省したんだよ?それなのにスキーできないなんて!」
「まぁまぁ、そう言わずに・・・ミカン食べる?」
「・・・もういい」
そう、スキーリゾートが近くにできたからと母の田舎に帰省したというのに、吹雪でずっと家の中に缶詰状態
こうして姉妹揃ってコタツにミカンという有様だ
これならば都会に残っていれば・・・そう思ってしまう
いったいどれだけミカンを食べた事やら・・・いい加減口の中が酸っぱくなってきた
「でもさ、本当に暇だよ〜。どこにも遊びにいけないし」
「そうねぇ、確かに暇だけど・・・」
「吹雪がやむのを待とうよ。そうすればスキーいけるって」
「そうやって、何日待ったと思ってるの!時間は有限なのよ!有限!」
「でも、お天気が相手じゃねぇ・・・」
「はぁ・・・暇だよ・・・つまんないよー」
なんて言ってコタツにつっぷした私に姉がそう言えばという感じに話を始める
「スキー場のある方の山とは逆の方に、ちょっと小さい山があるじゃない?あの山ってちょっと面白いお話があるみたいよ」
「面白い話?」
妹がミカンの皮をリンゴの皮を剥くようにくるくると一筆書きに剥きながら聞き返す
「ええ、なんでも鬼がいるとか」
「おにぃ?それはまたベタな・・・」
「どうもね・・・」
かつて、戦争に敗れた武士の家族達が逃げ延びた地がこの村だった
何とか村を作り、畑を作ったが、元は剣で生きていた者達の村。収穫は悪く人々は貧しく苦しい生活をしていた
そんな村のすぐ傍の山には、鬼が住んでいた
鬼は人里を荒らしたりせず、静かに山で暮らしているだけだった
そんな、鬼がある日村に降りてくるとこう言った
「村に必要な知識や手伝いをしてもいい。その代わりに、女をひとりもらいたい。俺の嫁になってもらう」
鬼の申し出に村人達は酷く悩んだ
鬼の協力は確かに必要だが、そのために村人を差し出すのか?鬼の嫁にさせるのか?
何度も何度も話し合いがされて・・・ついに村人達は鬼に協力を求める
「では、約束の通りに俺の嫁を選ばせてもらう」
鬼は村の女達をみまわして、嫁にするのにふさわしい女を選ぶのだが・・・鬼が選んだのは意外な女
「こいつがいい、こいつに決めた」
そう言って鬼が選んだのは年老いた老婆だった
村人達は悪いと思いながらも安堵した。年頃の娘を手放すのは惜しかったが、老婆ならば・・・
年のせいか子供の相手や編み物しかできる仕事が無い老婆を選んだ事が村人をほっとさせるのだった
それから、鬼は約束通りに村の人々に多くの知識を授けると、村の暮らしはあっという間に楽になっていく
作物は豊かに実り、水車が作られ粉が挽かれ、機織が布を作る
どれもが上質な物ばかりで、貧しかった村は周囲に一目置かれるようになっていく
そんなある日、気を良くした村長が鬼の下へ感謝の品を持って訪れる
山の奥にある鬼の家、そこで村長を出迎えたのは年若い娘
その娘は村長の事をよく知っているようで、嬉しそうに出迎えたのだが・・・村長にはそんな知り合いはいない
わけもわからぬままに鬼の所へ通されて、感謝の品を渡すついでに村長は尋ねる
「あの娘は誰でしょうか?」
すると鬼は大きく笑ってから言うのだった
「何を言うか?あれはお前達の所からもらった娘だ。もっとも、若返りの秘薬を使ったから気がつかないのは無理も無いがな」
そう、鬼は妻に選んだ老婆を娘に若返らせてしまったのだ
あまりの出来事にぽかんとする村長に鬼は言う
「この娘は本当に素晴らしい、ただ若いだけの娘と違って深い気配りや知識がある。こういう娘が俺の好みだ」
そんな鬼とのやり取りは静かに村へと広がる
すると、いつからか年老いた女が一人、また一人と鬼の住む山へと行くようになるのだった
若返りの秘薬をもらって、若さを再び手に入れようと・・・だが、そんな女達は結局帰ってこない
鬼が食ったと村人達はうわさするが、確かめに行く事もできず、若さを求める女を止める事はできない
「だって」
「・・・だって、って。オチは?」
「さぁ?」
「さぁって・・・・結局どうなのよ?!鬼が女の人達食べてたの?ていうか若返りなんて本当だったの?」
「だから、聞かれてもわからなから・・・」
「あー!そういうのって何だかイライラするっ!」
「確かにすっきりしないけどさぁ、その鬼ってアレだよね。若返らせるの前提で選ぶあたり策士?」
「そっち?そっちなの?!」
「でも、そのお話があるからかしらね?鬼が住んでいたっていう山、今でも女の人は入っちゃダメなんですって」
「へぇ、女人禁制の山か・・・珍しくも無いけど、そこまで徹底してるとはねぇ」
「・・・あのさ、いちおう言っとくけど、行っちゃダメだよ?外吹雪なんだからね?」
「わかってるって」
「本当〜?」
妹がどうも胡散臭そうな目で僕を見る。確かに暇つぶしにはいいかもしれない
でも吹雪の中で登山なんてシャレにもならない。ていうか死ぬ、あの山はそんなに高くないけど、吹雪の中で登るようなもんじゃない
「本当だって。雪山登山なんてごめんだね。それくらいならコタツミカンだよ」
「ならいんだけど・・・ちょっとわかるよねー」
「そうね、若返りの秘薬だなんて。女の夢よね」
「僕達まだ若いじゃん・・・」
「それはそれ、これはこれ」
「はいはい・・・」
そんな冗談みたいな話をしていたのが昨日の事
次の日、ようやく吹雪が収まったのを確認した僕はスキーに行くでもなく、登山をしていた
「鬼なんていないだろうし、秘薬なんて興味ないけど・・・ただスキーをするよりも楽しそうだよね」
そんな、好奇心が思わぬ事態を引き起こす
「パブロ、これは何?小説?それとも何か思い出してメモしてるの?」
「それがその・・・自分でもよくわからないんだ。 だけど何か思い出せそうな気が・・・ううっ!シモーヌ!」
「やめて、パブロ!私急いでいるの。 あなたもいそがしいんじゃなくって?」
「おおお、シモ〜〜〜ヌ、君の言うとおりさ・・・ だけど、その・・・なんて言うかなぁ、 もし僕のこの作品が出版されたら・・・」
「言わないで、パブロ、わかってるわ。だけどもう少し考えさせて。私、今日はもう行かなくちゃいけないの」
「おお、シモ〜〜〜ヌ。ウヴァテュ〜ム、ジュテ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ム、ケスコンヴァフェールドゥマ〜〜〜ン」
〜最終更新10月25日 サイトを全体的に圧縮〜

自己紹介 BBS 日記 作品展示室
遊郭 プラネタリウム 遊戯室 リンクリスト
ご意見ご感想などは「くねriziriアットマークd8.dion.ne.jp」へどうぞ
くね部分をローマ字にして、アットマークを@にしてくださいませ
また、当店に掲載されているイラスト及び文章を無断で使用する事を禁じます
使用したい場合、ご一報くださいませ
画面サイズ1024×768、フォントは中を推奨